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家づくりをはじめる方へ 



安心で快適に住み続けることができる家


新築後、気付いた不満

①暑い、寒い。
②間取り(部屋が狭い・収納が少ない・家事動線)
③外からの視線が気になる
+α 結露が発生する


ネットで検索するとこれらの要素が目立ちます。
ではそれぞれの解決策、

①UA値0.5以下、C値1.0以下
②2級建築士(できれば現場経験のある)でヒサシの提案してくれる方
③隣家の窓の位置や高さなどを設計に加える
+α 結露の計算をする


以下から具体的な説明です。


①暑い、寒い家は、UA値0.5以下、C値1.0以下を目標。断熱性能を上げ、気密値を下げることに気を配った施工ならこの不満は十分解消できる。

夏暑くて、冬寒い家とは
・窓が貧素
・断熱材が脆弱
・エアコンが効かない


以下の図は家の各部位から熱の流入出を表したものです。


※日本建材・住宅設備産業協会 提供


【左図】夏の冷房時
夏は窓から熱が入ります。他には屋根、外壁。

【右図】冬の暖房時
冬は窓から熱がにげます。他には外壁、換気。



1.窓
 窓は外気の影響を受けやすいことがわかります。断熱効果を上げるためには性能の良い窓を設置することで、外気の影響をうけにくい家になると考えて間違いありません。近年、窓リフォームが人気の理由はここにあります。

 しかし窓の性能だけを良くしても、他の部位の断熱性能をあげないと、冷たい浴室、寒い廊下など、温度ムラがある家にはかわりません。

 新築や増改築を行う際は省エネ性能の説明が義務化され、断熱性能がこれぐらいでエネルギーの消費はこれぐらいになりますといった説明を工事前に行うことになりました。適合しない場合は対策案をたてることになっています。

新築時の省エネ基準が変わるのをご存じですか? 国土交通省


リフォームでは、
「窓のリフォームを行うと補助金が使えてお得ですよ。」
「工事も短期間で終わります。」
など、お得なイメージや負担が少ないのがPRされていますが、家の性能は満足するほど向上しません。前よりマシになったかな?程度では現行の省エネ住宅には遠くおよばないことを知ることが最初の一歩です。



2.外壁と屋根
これは断熱材の性能で決まります。
断熱材によっては薄くても効果がでる商品もありますが、混乱するのでとにかく厚みを気にかけるようにしましょう。厚みがあるほど効果が期待できます。コストを抑えるため薄い断熱材を使うと断熱性能の効果は期待できなくなります。

内断熱、外断熱など断熱材の設置方法には種類はありますが、これから説明するものは内断熱にあたります。外断熱はコストと効果を考えると選択する必要がないので、説明は省きます。


断熱工法は吹付け断熱工法とグラスウールなどの断熱材を設置する充填工法の二種類に大別できます。



性能を追いかけるとコストがかかり、費用を重視すると性能がおちてしまいます。安くて良いものは断熱工事にはないことに気づくことが大切です。



3.換気(隙間)
換気することで奪われる熱量です。
キッチンの換気扇は直径がΦ150、換気の際ここから逃げる熱が多いのでキッチンの換気扇はできるだけこまめに入り切りしていただくのが望ましいです。

現在の新築は石膏ボードを下地に使いビニールクロスで仕上げるので、ある程度隙間は解消されます。現行の建築基準法に合致した建物を気密測定すると概ねC値2.0~4.0です。

しかし、C値2.0~程度では24時間計画換気の効果は期待できません。
24時間換気の設計は、家の広さから容積を算出し1時間に排出する空気量を決めその結果をもとに換気扇・給気口を設置します。
しかし、家のあちこちに隙間があるとそころから外気が入り家の外に放出することになるので、室内には新鮮な空気の場所と濁った空気が溜まっている場所が発生し換気ムラやショートサーキットとなってしまいます。これを改善するために隙間をなくす工事、つまり気密性が高い家をつくることが求められるようになりました。



無風状態と風が強く吹く時期とでは気密数値は大きく変わります。難しく考えるとわからなくなるので、まずはC値1.0以下を約束してくれる住宅会社を選ぶとよいでしょう。くどいようですが約束です。営業マンの口先ではありませんのでご注意を。

確かめたいなら
「気密検査していますか?」
と聞いてみましょう。



4.床
床の断熱方法は、床断熱か基礎内断熱の2つがあります。基礎外断熱もありますがデメリットしかないので省きます。
床断熱よりも基礎断熱が優れているような表現をよく見ますが、シロアリの発生リスク、それに徳島の風土にあっているかとどうかは疑問が残ります。

床断熱の利点は床下が外部として確保できるところにあります。断熱材の厚みも壁と同程度を確保できるので断熱効果も期待できます。ただ床には排水・給水・電気の配線など床に穴を開ける作業がおおく、気密を求めるなら床断熱より基礎内断熱が優れているといえます。そのほか床下にエアコンを設置できるのも基礎内断熱のメリットです。このように基礎内断熱の場合床下は室内としてとらえるべきで、防虫の薬剤散布はしないよう注意が必要です。

徳島県は床下の高い家が昔から多く存在するのには理由があります。それは河川の氾濫から家の浸水をまぬがれようとした経験からなるものですが、河川事業が進み今では治水がずいぶんと安定し大雨の浸水から悩まされることもなくなりました。しかしハザードマップなどで洪水・内水地域を確認するといまだに多くの地域が浸水地域として指定されています。近年は気候変動の影響で線状降水帯の発生により局所的に大雨が降るようになりました。

もし、基礎断熱にして床下浸水してしまったら。。。
基礎断熱はこうした点からも採用の是非の判断にしたいものです。


重ねるハザードマップ







家具を置かないライフスタイルが定着。収納は必須条件


②間取り(部屋が狭い・収納が少ない・家事動線)の不満は2級建築士以上を保有しできれば現場経験のある方に相談を。日射遮蔽も考慮し、ヒサシなど直接日光が建物にあたらないような配慮をしている設計ができれば、太陽の影響を受けにくくなりエネルギー消費も少ない家になります。

では間取りはどのようにして決まるのか?
大きく分けると2つあります。
まずは、ベースプランが複数用意されていてその中から選ぶといった、規格住宅系の商品です。
仕上げの素材はあらかじめ決められていて、その他の商品を使うとオプション扱いとなり費用がかさむのが特徴です。

あらかじめ準備されている間取りから選ぶことで満足するならこの方法でもよいと思いますが、問題は敷地の特徴を考えた間取りではないので注意が必要です。

もうひとつは、要望を整理しながら間取りをつくりあげていく注文住宅と呼ばれる間取り設計です
こちらは、担当者の力量が間取りの良し悪しを大きく決めることになるので、よい担当者よい設計士に出逢うことができれば満足する間取りになります。ところがネットで書き込まれている不満の数々は担当者が力不足なうえ顧客と相性があっていないように思います。見栄えのする写真をつかった過度な広告の影響、オーバーな表現を多用する会社に安心を求めて選んでしまうと、悲しい結果につながってしまいます。


1.部屋が狭い
家の間取りの打ち合わせしている際に、置いてみたいソファーやテーブルを図面に描きこむとイメージが付きやすいです。けれども計画中の間取り図には家具やソファーはかかれていますが、実際使うものではないケースがほとんどです。それどころか部屋を広く見せるため家具を小さく描いている図面もよく見ます。この場合ユーザーはテーブルやソファーの周りにスペースがあるように錯覚するので、狭さに気づかず工事を始めてしまいます。

16帖や20帖など具体的な広さの確認も必要ですが、開放感が欲しいなど感覚に問いかけているか気づくことも大切です。窓の大きさと取り付け位置によって部屋の広さの感じ方かも変わりますし、天井の高さでもかわります。吹き抜けが欲しい。大きな窓がほしいといった要望は開放感を求めているときによく聞く要望なので、実質的な広さなのか感覚のものなのかを考えて整理するとよいです。


2.収納がすくない
私の設計した新築の完成見学会にこられた方の感想に”収納が多い”と評価してくれる方がたくさんいます。「収納がたくさんあって、それぞれ大きさも奥行きも違うので便利に使えそう」と聞くとやはり収納は大切なのだとあらためて感じます。

阪神淡路大震災以降、家具の転倒を避けるためタンスや食器棚を家にもちこまなくなりました。女性の社会進出もすすみ家事にかける時間が短くなった結果、全自動洗濯機や食器洗い乾燥機、それに掃除ロボットといった家電製品の設置や収納場所も設計では大切な要素となっています。

シューズクロークや食品庫はすっかり定着しましたが、小物が煩雑になりがちなリビングに収納がなかったり、洗濯物干し周辺に衣類を収納するスペースがなかったり、季節家電を収納するスペースがなかったりなど、収納不足と感じさせてしまう図面をよく見かけます。

現在住んでいる家でここに収納があったらいいなと考えるだけで。収納不足はずいぶん解決できます。


3.家事動線


キッチン⇔家事室⇔ランドリースペースが直線で距離が短いと良い動線とされてきました。
近年、家事を行うのは主婦だけではなく家族で行う考えが浸透し、誰でも家事を行いやすい動線が求められています。

この解決策として「回遊動線」があります。

これまでの住宅は主婦ひとりが使いやすさや便利さを考えキッチンや水廻りを設計していましたが、家事を家族でこなす家庭なら、使用人数もふえるのでキッチンや水廻りなどでは人の往来が増えます。女性にくらべ男性は体が大きいので広さと高さが必要となってきます。
そちらに行きたいのに人がいると狭くて通れない、収納する場所の前がふさがって収納できないなど、作業が重複することも考えながら設計すると、回遊動線が効果的だと感じることは多いです。


建築士が間取りの設計をしていると思われがちですが、会社によっては設計士の資格を有していない、無資格者が設計業務も行っていると聞きますし見もしました。
間取りを考え図面を描くことなら、好きで慣れているならカタチ程度のものは作成できますが、家の設計は、法規・構造・施工・計画など多面から考え、確認しなければなりません。構造の知識が乏しい方が間取りを作成したのをみると、2Fの真下に柱や壁がなかったり、建物の形状が複雑だったり、施工の知識がない方の間取り図では、2Fの水廻りの排水や給水経路が盛り込まれていなかったり、敷地の高低差をよく理解せず排水経路されてるなど問題点が多いのが目につきます。ドアの後ろにスイッチがあって使えないや家具の後ろにコンセントがあるなどは計画の知識が欠落している方と考えられます。

複数人の設計士でカバーするのもひとつの方法ですが、人件費がかさみますし、それぞれの相性があっていないと「あの人の好みはコッチだ。いやアッチだ。」など社内での後ろ向きな会話が容易に想像でき、なかなか良い間取りを描けるとも思えません。

設計、見積、施工管理、アフター。ひとつの窓口、ひとりの設計士ですべてが完結できることの心地よさ、安心感をなかなか簡単に実現できないのは理由があるのでしょうね。




設計者の力量がハッキリとわかるのがコレ


③外からの視線が気になる

生活にすっかりと入り込んだ車社会。徳島では公共交通機関だけでは生活がままならないどころか、電車やバスなどは年に数える程度の利用となっている方も多いのではないでしょうか。

家の設計でも車の台数と駐車スペースの場所は大切な要素です。
駐車しやすく複数台駐車できるよう広い敷地が好まれ、スムーズに車を出し入れを希望する方が増え、敷地と道路の境界にフェンスや塀などを設ける提案はずいぶんと少なくなりました。車のことだけを考えるとこれで良いのですが問題は、外からの視線です。

車から玄関は単純なアプローチが多いため、玄関内部は道路から丸見えの設計が目立ちます。夜に道路を通行するヘッドライトがリビングの窓を照らすような間取りも散見します。これではせっかくリビングに設けた大きな窓も台無し、視線が気になるので常にカーテンを閉めなきゃいけないので、窓のよさを感じることもできません。

よくあるのは、窓を開けるとお隣さんの水廻りの窓が正面。勝手口をあけると道路から丸見え。ウッドデッキは西日が当たり続け使えない。など例をあげるときりがありません。窓の大きさや位置と高さを考えると改善できることが多いのに加え、日差しを遮る屋根形状やヒサシを設けることも効果があります。

工事価格を抑えるため近年はヒサシも軒先もない、箱のようなシルエットの家が多くなりました。従来の家とは変わった形をしているので好まれましたが、これでは太陽の日差しが当たりっぱなしで外気の影響をうけやすくなってしまいエネルギー効率も低下します。

設計士がきちんと説明し良い家を提案しなければいけないのですが、なかなかそこにたどり着かないまま気づかないで新築の計画が進み、建ててしまっている家が多いように思います。




計算し根拠を示すことが重要


壁が結露するかの可否は計算をもとにして説明しています。

結露解消の相談は、今住んでいるアパートやマンションで窓のガラスやアルミ部分にたくさん結露がついて掃除が大変、黒いカビがはえるのがイヤなど、困る点があげられます。

見える部分よりも気をつけなきゃいけないのは、内部結露といって壁の内部で結露が発生してしまう現象です。住宅の設計・施工をおこなう実務者はなによりこの部分を十分に注意しなければならないと考え、計算によってお客様に説明を行うようにしています。

ネットで”内部結露”と検索すると、不安を煽るような書き込みが多く、中にはちょっと表現がオーバーなものもあります。心配をとりのぞくために、ぜひ計算結果をみせてもらうことをオススメします。




さいごに


小学校3年生のころ、両親が建てた家に引っ越した。
自分の部屋も2階に作ってくれてとても嬉しかったけど、冬は電気ストーブつけていても寒く夏はとにかく暑いのが、記憶の中に強く残っている。

機会があってその家をリノベーションすることになり室内を解体しおどろいた。
壁に貼り付けられた断熱材は隙間だらけで、畳の下は床下で断熱材はない。天井にも断熱材はなかった。
これでは夏は暑いに決まっている。熱がこもる分、条件によっては外よりも気温はあがることも考えられるし、冬は部屋でストーブつけてもどんどん外に逃げていくのでいっこうに暖かくならない。

今はよい断熱材、良い断熱工法が開発され正しい断熱施工と素材を使い、夏は涼しく、冬あたたかい快適な家をつくることができる。
さらに家に陽があたらないよう、植物で陰をつくると効果はさらに期待できる。

季節ごとに窓から入る風や、太陽の位置が家にどのように陽があたるかを考えると、違った視点で家づくりを見つめることができ、新しい発見につながると嬉しい。



T.yokozeki